日本語日本文学科で求められる人物像
「ことば」と「ことば」を通しての人間の営み(特に文学作品)に、強い関心を抱いていること。
- ・独りよがりな読書家ではなく、厳しい勉強から何かを得たい人
- ・知的探究のために、努力と労をいとわない人
「ことば」や作品・思想への関心を糸口に、人間や社会との関わりの中で様々な問題を探究し、その成果を社会に向かって発信する意欲があること。

どのような卒業生を送り出そうとしているのか?
「ことば」や作品の研究を通して、論理的文章を書く力を身につけるだけでなく、広く論理的思考をもとに規範的な日本語を使いこなすことのできる人
自分の学んだことの意義を考え続けていける人
どんなことを学ぶのか、どのようなことができるのか?
カリキュラム | 1年次 | 2年次 | 3年次 | 4年次 |
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4年間のステップ | 日本語日本文学を研究するための基礎知識を身につけます。 | 1年次の基礎から応用に至る学習段階です。 | いよいよ研究対象を考えはじめ、絞り込んでいく段階です。 | 総まとめの時です。 卒業論文履修分野を選択します。 |
必修科目 |
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[卒業論文履修分野]
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選択必修 |
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※必修科目…必ず受講しなければならない科目
選択必修…科目群の中から幾つかを選んで受講する科目
1年次学習内容詳細
必修科目
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日本語学概論I・II
日本語を分析的に見直すための基礎を学びます。
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文献学基礎論
文学とは何かにはじまり、文献資料の扱い方やそれを証拠として使うための技術を学びます。
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文学研究法基礎
研究として文学を読むとはどういうことなのか、何を調べるべきなのか、どう調べたらよいのか。
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古典文学史I
万葉の時代から王朝文学への史的展開を学びます。
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近代文学史
明治以降の文学の展開を学びます。
選択必修
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歴史基礎論
歴史とはどのように認識されるものなのか、史料の見方とともに学びます。
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言語基礎論
言語一般の基礎理論を学びます。
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知識と方法
思考のための基礎理論を学びます。
2年次学習内容詳細
必修科目
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日本文法Ⅰ・Ⅱ
日本語の法則性と理論を学びます。
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現代日本語の分析
現代日本語について、日本語学概論の基礎知識レベルよりも深く踏み込んで分析するとどうなるかを学びます。
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古典文学史Ⅱ
一般になじみのある王朝古典と近代文学をつなぐ、中近世の文学の展開を学びます。
選択必修
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演習
具体的なテキストに向かいあい、各自で調べ発表をします。資料読解の技術を身に付け、発表の技術を磨くための授業です。
3年次学習内容詳細
必修科目
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日本語史Ⅰ・Ⅱ
日本語の発展的知識を習得します。
選択必修
- 演習
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特殊研究
卒業論文を意識しながら研究テーマを選択し、それに合った研究法を身につけます。
4年次学習内容詳細
卒業論文履修分野
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日本語学分野
日本語の意味・表記・音声や文法、方言、ことばと社会との関わりなど、様々な課題を扱います。
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日本文学分野
古典から近代まで、詩や小説、物語はもちろん、様々なジャンルが対象となります。
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日本語教育学分野
日本語を母語としない人たちへ日本語を教授するための研究をします。理論面では、日本語の音声、文字・表記、文法、日本語教育の教材、評価法などを、実践面では、いろいろな教授法、指導案の作成方法などの課題があります。
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人文学分野
日本語や日本文学を、海外との比較により研究したり、周辺領域との関わりで研究したりします。
卒業後について
大学院文学研究科(博士前期課程・博士後期課程)
卒業論文のテーマを更に深く探究したい人、教員免許の専修免許を取得したい人、研究活動に関心のある人などには、大学院への進学の道も用意されています。分野は大きく、日本文学・日本語学・日本語教育学・日中比較文化の4つに分かれています。参考までに、近年の修士論文のタイトルを以下に掲げておきます。
27年度提出
[博士前期]
- 「有対動詞「抜く」「抜ける」「抜かす」の用法の対応と相違」
- 「「生活者としての外国人」のための日本語テキスト作成に向けて ―その枠組みと現状」
- 「中国の大学の日本語専攻におけるダイレクトメソッドについて」
- 「中国人学習者による日本語の特殊拍発話の特徴 ―アクセント型の違いによる比較」
- 「「は」の用法とモダリティ」
- 「『源氏物語』における和歌の機能」 ―《父親の付属物》である三人の女君と和歌の関係について」
26年度提出
[博士前期]
- 「談話構造における文末詞「シ」の機能とモダリティ」
- 「韓国語を母語とする日本語学習者の直示用法の指示詞の誤用と要因」
- 「熊本藩士井沢蟠竜の研究」
- 「中国人学習者による日本語の特殊拍発話の特徴 ―アクセント型の違いによる比較」
- 「経験のない日本語支援ボランティアに対する「自己教育力要請型」教師研修の有効性に関する実践研究」
- 「『ての』形式をとる連体修飾表現の考察」
25年度提出
[博士後期]
- 佐藤友哉「他者を要する動詞述語文の研究」
- 和田礼子「従属節におけるアスペクトの研究」
[博士前期]
- 「日本語学習者の「ケド」「カラ」の文末使用について」
- 「日本語学習者による日本語学習者の日本語評価 ―日本語母語話者と日本語母語話者教師との比較を通して」
- 「現代日本語の文末における判断表現の諸相」
- 「明治期における「怪談」と鏡花作品 ―「春昼」「春昼後刻」を中心に」
- 「熊本方言による「ヨル」と「トル」について ―〈直前〉用法を中心に」
- 「国語科教育を参考にした日本語教育における文学作品の取り扱い ―太宰治『走れメロス』の教材化と実践を通して」
- インドネシア語母語話者が書いた日本語作文に見られる誤用の分類と分析」
24年度提出
[博士前期]
- 「版本『嶋原記』の書誌と受容」
- 「「~やすい」「~にくい」の意味・用法の見直し」
- 「失語症例のオノマトペ使用に関する研究」
- 「熊本地域若年層話者による否定疑問文の談話機能」
- 「『ての』形式をとる連体修飾表現の考察」
23年度提出
[博士後期]
- 西村るり「「きく」教育の実践とその分析に関する研究―国語教育実践からの日本語研究へ迫る―」
[博士前期]
- 「中国語母語話者の日本語作文における接続表現―中国語の複句との対照を通して―」
- 「発音改善のためのリピーティングとシャドーイングの実験音声学的対照研究」
- 「芥川龍之介の諷刺―帝国主義に対する批判意識―」
- 「萬葉類歌の論―天平十六年以前の大伴家持作歌を中心に―」
22年度提出
- 「命令文の諸相―働きと意味分化及び対「話者自身」―」
- 「「恋人が結婚しようと言ってくる」は難しい―「Vテクル」の使用状況、習得、そして教授法―」
- 「熊本県八代市における外国人支援の現状と問題点―今後望まれる八代市在住外国人のための日本語・生活支援―」
- 「現代日本語の使役表現に関しての考察―日本語の使役表現における意味的な特徴及び使役表現における使役主体と使役対象の考察」
- 「日本語のアスペクト・中国語のアスペクト―中国語における日本語動詞の継続相が示す意味の実現とその条件―」
21年度提出
- 「『明暗』―登場人物を中心に―」
- 「明治期の翻訳文体における人称代名詞―『伊蘇普物語直訳講義』の二文体をめぐってー」
- 「認知言語学視点からの失語症者の理解と表出についての考察〜格助詞「に」を用いた文を中心に〜」
- 「無助詞文を考える」
- 「失語症者における構文の多義ネットワーク構造の捻討〜認知言語学の視点より〜」
20年度提出
- 「長瀬真幸『万葉集佳調』の諸問題」
- 「「とかく」「とにかく」について」
- 「シャドーイングの効果~リーディングにおける言語処理能力との関連性~」
- 「国語科授業のためのリライト教材の作成と指導の工夫」
- 「「うれしい」と「たのしい」の使い分け―中国人学習者による使い分けの比較を中心に―」
19年度提出
- 「高本紫溟攷」
- 「熊本方言における長距離上昇音調について~フォーカスとの関連性を中心に~」
- 「初期萬葉の相聞─巻二相聞の部の構造をめぐって─」
- 「「は」が使われる文とそれに関する文に対する添削の判断基準」
- 「連歌寄合書『松藤集』考」
よくある質問
入試に関して、よく訊ねられる質問にお答えします。
小論文を採点しての感想を教えてください。
令和3年度に行われた一般選抜後期日程で出題された小論文の解答を見ると、全体的に真剣に取り組んでいた印象で、途中で記述をあきらめたような解答や、的外れな主張を展開するものは例年よりも少なかったと感じました。ただ、概括的な記述を繰り返して字数を満たす解答がやや目立ったことや、具体例を取り上げつつ考察を展開する解答が少なかったことは少し残念でした。
また、今回の小論文には設問で求められていることに十分に答えていない解答が散見されたように思います。例えば、ある題目について課題文に書かれている内容をまとめることが求められている設問において、ただ本文を抜き出し切り貼りして文章を構成していたり、求められていない感想を記したりといった解答です。
小論文への対策として、まずは設題から作題者の意図を読み取り、求められている記述内容を把握する力、そして、課題文の内容を理解した上で自分のことばでまとめる力を養ってほしいと願っています。
今年の入試(令和4年度入試)で特徴的なことがあれば、教えてください。
小論文や現代文の分野で特に感じたことですが、設問の意図を十分に理解せずに大まかな内容の記述に終始している解答が見られました。これは今年に限ったことではなく、例年同様の傾向が見られます。まずは、設問をしっかり読み、求められている記述内容を把握してから文章作成に取り組んでほしいと思います。
また、古文文法の分析の枠組みは入学後にも折々に必要となる知見です。品詞の分類、活用表や個々の付属語の意味用法の基礎的な部分はしっかり記憶しましょう。もちろん機械的な記憶はすぐに消えてしまいますので、古典本文の具体的な文脈理解に援用するなどして、活用した経験の記憶とともに頭の中に収めておきましょう。さらに、音読を通して古典の文章の呼吸が身についてくれば理解が一層円滑になります。
漢文の解答は、出来不出来がはっきりと分かれていた印象です。特に漢文に苦手意識を持つ人は、県立大の入試の過去問を解くなどの対策をしっかり行う必要があるかと思います。